間葉系幹細胞が脳腫瘍細胞の増殖に及ぼす影響の検討をin vitroにて行った。本実験で得られた上清に間葉系幹細胞から分泌された各種cytokine、chemokine、growth factorを測定し、増殖促進効果を担うパラクライン因子の同定を予定している。ヒト間葉系幹細胞が分泌する因子を同定する必要があると判断し、ヒト間葉系幹細胞(タカラバイオ)とヒトU87グリオーマ細胞(ATCC)を使用した。まず、ヒト間葉系幹細胞とU87グリオーマ細胞といった異なる種類の細胞をco-cultureする必要があるため、両者ともに適した培養条件の検討を行った。培養液としてはMSCGM-CD、MSCGM、α-MEMの3種類を比較した。両者ともに良好な発育が得られたのは、α-MEM、20%FBS、L-glutamine、penicillin-streptomycinの組み合わせであった。この培養液を用いて、合計細胞数を5×10^5個として、U87グリオーマ細胞とヒト間葉系幹細胞を0:100、1:99、10:90、50:50、100:0の割合で5cm dishにplateして1、3、5、7、9、11、13、15日に細胞数を計測した。Growth curveを描き、間葉系幹細胞が脳腫瘍細胞の増殖に及ぼす影響を検討した。9日目以降は、U87グリオーマ細胞の含有率が10%のdishでもconfluentに達していたため、増殖に及ぼす検討はplate後7日目までのデータで行った。Plate後7日目では、U87グリオーマ細胞とヒト間葉系幹細胞の割合が0:100、1:99、10:90、50:50、100:0のdishにおいて、それぞれ4.8×10^5個、6.0×10^5個、14.0×10^5個、27.6×10^5個、36.8×10^5個であった。ヒト間葉系幹細胞の増殖が非常に緩徐であることを考えると、1:99の割合のdishから既に増殖促進効果が得られていた。特に、10:90、50:50の割合のdishでは、U87グリオーマ細胞の細胞数は予測された数の1.5倍程度に増加していた。増殖促進効果がヒト間葉系幹細胞の影響であることを確認するために、ヒト間葉系幹細胞と類似した形態をもつ、ヒト線維芽細胞株をヒト間葉系幹細胞のnegative controlとした追加実験を進行中である。本実験において細胞数を計測する際に、上清を回収、冷凍保存しており、これを用いてサイトカインアッセイを行っている。
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