研究概要 |
癌幹細胞は概念的には存在することは、示唆されているが、定義すら決まっていないのが実情ではあるが、それでもこの10年間で、幹細胞が悪性化することや、ある種のがん細胞が幹細胞と共通する形質を持っていることが示され、癌幹細胞と幹細胞とくに神経幹細胞にいろいろな共通点があることがわかっている。逆に幹細胞と癌幹細胞との相違点は同定されていないのが現状である。そこで、正常脳の神経幹細胞と脳腫瘍から採取した癌幹細胞とを比較検討することで、その相違点を明らかにし、さらに脳腫瘍の治療に有用な表面マーカーなどの検出を試みることは、非常に重要と考えられる。 神経幹細胞と同様に癌幹細胞も浮遊培養法によりbFGF,EGFの存在下で可能であることがわかっている。われわれは、これまで神経幹細胞の浮遊培養法、分化誘導などについて報告してきた。今回、臨床的に脳腫瘍(glioma)と診断された患者の摘出組織より癌幹細胞の特徴を有した細胞のcell lineの作成に成功した。 分離培養した細胞は、CD133,nestinに陽性を示す細胞塊sphereを形成し、分化を誘導することにより抗β-tubulin、GFAP、04抗体などに陽性となることがわかった。 また、分離培養した癌幹細胞の特徴を有したSphereの増殖力、分化力を現在測定中であり、臨床像の違い(悪性度、病理学的相違点)などとともにその相違点、類似点などに関しては詳細に検討する予定である,また、同細胞は、蛋白質/ピストン脱アセチル化酵素SIRT1の発現も認められることが判明し、今後その発現量、臨床像などの相違などを比較検討することにより癌幹細胞に投機的な遺伝子などの探索も行う予定である。
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