研究概要 |
過去の研究者らの研究で海馬CA1領域の神経細胞死モデルを用いて成体神経幹細胞は脳室下帯に存在するとともに各種成長因子投与による増殖能賦活作用によってCA1領域の神経細胞再生を報告した。これらの結果を踏まえ線条体及び大脳基底核領域にも同様の現象が再現可能か検討を行った。今回特に海馬CA1領域、線条体、視床領域における神経再生誘導応答を解析する為、一過性前脳虚血モデルの作成を継続した。両側椎骨動脈完全閉塞後一過性両側総頸動脈閉塞に低血圧負荷を加えた4血管閉塞部分再灌流モデルを使用したが、低血圧負荷侵襲および全脳虚血時間の設定により海馬CA1領域の遅発性神経細胞死に変動が生じた。そのため虚血時間を延長したところ線条体領域の遅発性細胞死も観察されたものの、一方で生存率の課題が残った。これらの結果を踏まえ虚血時平均血圧を60mmHgに再設定後,非常に安定した虚血モデルが形成された。このモデルを用いて各種成長因子を投与後細胞応答を各種手法を用いて解析した。今回の研究期間内における統計学的有意性を示した神経細胞新生は得られなかった。原因として遅発性神経細胞死に至る閾値設定と個体生存のための閾値設定のバランスが挙げられる。また遅発性神経細胞死におけるアポトーシスの関与が示されることからアポトーシス誘導蛋白を導入することで負荷侵襲が低減可能か検討を行った。本研究は次年度以降引き続き検討を行い実験モデルの安定化を前提に再生誘導可能か更なる検討を図る予定である。
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