成獣マウス中枢神経系におけるTROYのリガンド、LTαの発現 成獣マウス中枢神経系におけるLTαの発現を、LTαに対する抗体を用いた免疫染色法により検討した結果、脳室下帯(subventricular zone ; SVZ)や脳室帯(ventricular zone ; VZ)に強い発現を認め、海馬や線条体、脳梁にも広く発現が認められた。成獣のSVZには、PSA-NCAM陽性のニューロン前駆細胞であるtype A細胞、GFAP陽性の神経幹細胞やアストロサイト系譜細胞を含むtype B細胞、及びEGFR陽性の増殖細胞であるtype C細胞があり、神経新生、グリア新生やグリオーマ形成等に関与することが知られている。これらのマーカーに対する抗体と抗LTα抗体との二重免疫染色を行った結果、SVZのほとんどのLTα陽性細胞にGFAPの発現を、一部のLTα陽性細胞に神経幹細胞のマーカーであるnestinの発現を認めたが、PSA-NCAMの発現は全く認められなかった。また、VZの上衣細胞においてnestinとLTαとの共存が認められた。したがって、LTαはSVZの神経幹細胞やアストロサイト系譜細胞を含むtype B細胞、及びVZの上衣細胞に発現し、グリア新生、グリオーマ形成、及びそれらの分化に関与する可能性が考えられる。さらに、以前に報告したようにTROYもSVZのtype B細胞やtype C細胞に発現していること、TROYがグリオーマ細胞からアストロサイトへの分化を誘導することから、LTα-TROYのシグナルがSVZのtype B細胞からアストロサイトへの分化や、グリオーマ細胞からアストロサイトへの分化に関与している可能性が期待できる。
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