研究概要 |
新規グリオーマ幹細胞増殖因子の同定を目的として研究を行った。脳腫瘍モデルマウスにおいて免疫学的手法であるmodified SEREX法を用いてグリオーマの増殖抑制治療の新規標的分子としてKIF23(kinesin family member 23)を、DNAマイクロアレイ法を用いた発現解析からグリオーマの新規抗浸潤治療の標的分子としてuPARAP (urokinase plasminogen activator receptor associated protein)をそれぞれ同定し、それらの発現および機能解析を行った。in vitroにてグリオーマ細胞におけるsiRNAを用いて紡錘体中間部に局在する微小管の重合に関与する分子であるKIF23をknock downすると、細胞周期にG2M arrestを誘導する事によって、グリオーマ細胞の増殖能を著明に抑制することが示された。また,この表現型はin vivoでも確認された。またin vitroにてグリオーマ細胞におけるsiRNAを用いた細胞膜タンパクであるuPARAPをknock downするとグリオーマ細胞のアクチン細胞骨格の変化を介してその移動能および浸潤能を著明に抑制した。siRNAを用いてuPARAPの発現が抑制されたグリオーマ細胞は大型でstress fiberの形成が目立つ"動かない"細胞の特徴を備えていた。またKIF23およびuPARAPはグリオーマ幹細胞においてもタンパク質レベルにおいて発現している事が確認された。以上の知見からKIF23およびuPARAPは新規グリオーマ治療の分子標的となり得る事を示唆しているものと考える。
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