研究概要 |
【研究方法】 1)腫瘍組織よりのRNAの抽出と定量PCR反応 小児悪性脳腫瘍{髄芽腫、悪性神経膠腫、悪性上衣腫、悪性奇形腫、悪性胚細胞腫のmRNAの定量など}の摘出術時に得られた脳腫瘍組織(100~500mg)よりQiagen社製、RNA抽出キット(RNeasy)を用いて総RNAを抽出し、得られた総RNAより1μgを用いcDNAを合成し、Stratagene社製のサーマルサイクラー(Mx3000P)を用いてRNAを定量した。尚、コントロールとしてBDバイオサイエンス社の小脳組織より得られたRNAを用いる。各遺伝子の発現量はGAPDH遺伝子など構成的に発現している遺伝子発現量と比較し、適宜、補正する。プライマーとして用いる遺伝子はTrkC、p53、c-myc、ErbB2、B-catenin、Sufu、PDGFR、PCNA、SPARC、G-CSFRを測定した。 2)臨床データとの比較 初発時の造影MRI像や臨床症状を播種の有無、転移性腫瘤形成に有無などにより細かく分類し、各因子の発現と比較する。各因子と密接に関係がある症状を検討する。治療成績・予後などと比較検討し治療法やその成績と関係する因子を検討し、リスク分類を行う。上記の文献の内容と定量PCRで得られた結果を比較検討し、総合的な予後因子を予想する。 【実験結果】 今回は、初発髄芽腫播種8症例、神経膠腫5症例、上衣腫14症例から摘出した、腫瘍細胞(計27症例)の解析をおこなった。各悪性腫瘍において遺伝子発現量は異なった。播種性髄膜腫は非播種性髄芽腫に比較してSUFU, ERBB2, and PCNAが高発現していた。その結果は、初発臨床症状的には類似していた。全ての神経膠腫症例においてPDGFRaとG-CSFRは高発現していた.上衣腫の遺伝子発現パターンは神経膠腫の遺伝子発現パターンに類似しており、髄芽腫の発現パターンとは異なる傾向を認めた。
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