研究概要 |
本年では、本研究の目的である頸髄慢性圧迫病態の神経可塑性をより解明するために、脊髄慢性圧迫モデルを作成し、その病理学的観察を詳細に行った。モデル作成1年後の頚髄の病理組織像ではコントロール群と比較してモデルラットではくも膜下腔が狭小化し、明らかに脊髄が周囲組織により全周性に圧迫され扁平化していた。強拡大像では白質で軸索の脱髄や空胞化が顕著にみられ、灰白質の前角は明らかに扁平化し、前角細胞数もコントロールラットに比し67.1%減少していた(コントロールラット:33.3±3.5m/min、モデルラット:21.7±4.5m/min)。電子顕微鏡学的検討では,コントロール群に比しモデルラットでは前角細胞は小さく,核が偏在していた。また,白質では,明らかな脱髄に陥った神経線維と再生線維(remyelination)が混在していた。また、リポゾームの高密度変性や、クロマチン凝集が見られた。脊髄慢性圧迫に伴う変性的変化と修復的変化が共存していると考えられた。 さらに、運動が脊髄慢性圧迫モデルラットに及ぼす効果を検証した。トレーニング群には、トレッドミル強制歩行20分間を週5回、4週間継続した。歩行速度は最大歩行速度の50%と設定した。4週間トレーニング後のトレッドミル最大歩行速度はトレーニング群で有意に高値を示しおり、今後は病理学的解析をすすめていく予定である。
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