研究概要 |
ラット坐骨神経圧挫モデルを用いて、Macrophage (Mφ)の末梢神経再生への効果を検討した。 成熟ラットの坐骨神経を坐骨切痕の下で155g/mm^2圧の血管クリップを用いて圧挫し、axonotmesisモデルを作製した。Clodronate Liposome (Mφをapoptosisに誘導する薬剤)を損傷前日、損傷後2日、損傷後5日にラット尾静脈より2ml投与を行った(A群)。対照群にはPBS Liposomeを同様に投与(B群)、損傷後14日に坐骨神経を末梢まで採取し,未固定凍結横断切片を作製した.抗ED-1抗体(Mφ)、抗EBA抗体(血液関門因子)、抗RECA1抗体(血管上皮細胞)を用いて免疫組織化学染色を行った。抗体に対する陽性細胞数を画像解析ソフトを用いて計測し、検討を行った。B群と比較しA群はED-1陽性細胞数が約50%と有意に減少した。血液神経関門(BNB)はbarrier機能を持った血管の割合をEBA陽性細胞数/RECA1陽性細胞数として数値化して評価したところ、B群とA群に有意差はなかった。 我々の過去の検討では、ラットの坐骨神経圧挫モデルにおいて、損傷後14日目にMφ数がピークとなり、Mφが軸索再生の環境を整えると考えられた。しかし今回の結果から、Mφ減少モデルでもBNBはコントロール群と同等に再生していることがわかった。この理由として、BNB再生に関してはMφの与える影響よりも,schwann細胞等の他因子の影響が強い可能性が考えられた。 以上を日本整形外科学会基礎学術集会にて発表予定である。また、今後は同モデルにおけるschwann細胞やサイトカインの変化を検討する予定である。
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