研究課題
ステロイド性骨壊死のもっとも多い基礎疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)症例における大腿骨頭前方回転骨切り術の20年以上の長期経過を調査した。手術時年齢を20-40歳に限定した本調査では、25年関節温存率は73%であった。注目すべきは、7割以上の若年者が人工関節置換術を回避できただけではなく、これらの関節温存患者のなかには健常日本人と変わらないQOLを獲得・維持している患者も複数認められたことである。本調査結果は、人工関節一辺倒の欧米型股関節外科のあり方に警鐘を鳴らす上でも意義のある研究であり、SLE研究の代表的な英文誌であるLupusに掲載された。また、大腿骨頭壊死症の発症における重要なステップである骨頭圧潰に関しては、そのメカニズムや病態は未だに不明である。今回、手術時の摘出骨頭標本を用いて、圧潰は骨頭のどの部位を起点として発生するのか、及び、圧潰部位は壊死領域の大きさと関連があるか、を検討した。Stage 3Aまたは3BのIONの初回手術時に切除された、連続した30骨頭(25患者)を対象とした。骨頭中央の切片において、壊死領域の内側端が大腿骨頭窩を超える群と超えない群とに分け、圧潰部位の違いの有無を検討した。30骨頭すべてにおいて、圧潰は壊死領域の外側端を起点として発生していた。壊死領域の内側端が大腿骨頭窩を超えない場合、19骨頭中18骨頭(94.7%)において軟骨下領域に圧潰を認めた。これに対し、壊死領域の内側端が大腿骨頭窩を超える場合、軟骨下領域に圧潰を認めたのは11骨頭中4骨頭(36.4%)であった。本結果は、骨頭圧潰のメカニズムを解明する上で重要な見解であり、整形外科の代表的な臨床系雑誌であるJournal of Bone and Joint Surgery Brに掲載された。
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Journal of Bone and Joint Surgery, Br
巻: 93(2) ページ: 184-187
Lupus
巻: 19(7) ページ: 860-865