研究概要 |
β-tricalcium phosphate(β-TCP)は骨伝導能を有する吸収性の人工骨材料として臨床で使用されている。近年、細胞を付加することで骨形成を促進することや、骨誘導を来すことが報告されている。しかしながら、人工骨に細胞を付加した場合、移植後の人工骨内にドナー由来細胞がどの程度残存するかは不明である。今回我々はレシピエント由来骨前駆細胞の人工骨内への侵入と骨形成への関与を検討した。移植材料として、β-TCPの多孔体(気孔率75%,直径5mm×高さ3mmの円盤状)を使用した。細胞付加群として、野生株マウスの大腿骨より骨髄細胞を採取し、Selective cell retention法でβ-TCPに付加したものを用意した。細胞を付加しないものを対照群とした。GFPマウスの背部皮下に細胞付加β-TCPとβ-TCPのみをそれぞれ1つずつ移植した。移植後4週で検体を摘出し、組織学的に評価した。細胞を付加した群では人工骨内に骨形成が確認されたが、何も付加しなかった群では骨形成は全くみられなかった。両群ともに人工骨内ではGFP陽性細が多数観察された。人工骨内におけるアルカリフォスファターゼ活性を示す領域は、細胞を付加した群で有意に高かった。骨形成内部において、GFP陽性の骨細胞が観察された。骨移植材料としてのβ-TCPに骨髄細胞を付加することで、異所性に骨形成を生じることが確認された。これまで人工材料に細胞を付加することで骨形成促進効果が報告されているが、今回の結果より、ドナーだけでなくレシピエント由来の骨前駆細胞が関与することが示唆された。
|