ヒトにおける腰椎後方除圧術後の傍脊柱筋委縮の病態解明のため、ラットを用いた縦割術動物モデルを作製し、組織学的手法を用いて筋組織損傷の進行と回復過程を詳細に検討した。 SDラットを用いて腰椎棘突起縦割式椎弓切除群(以下、縦割群、N=45)とコントロール群(N=35)を作製した。術後経時的に傍脊柱筋組織のパラフィン切片と凍結切片を作製し、HE染色を用いた筋組織および筋細胞の形態学的評価と、免疫染色炎症細胞(マクロファージ)の浸潤を比較検討した。 ラット縦割群では、従来群と比較して術後の筋占拠率が高く、すなわち縦割群では傍脊柱筋萎縮が有意に少なかった。この結果は我々が過去に行った臨床研究と同様であり、ラット縦割モデルは臨床における縦制術を再現していると考えられた。従来昨では、脱神経された筋組織に特徴的な筋細胞の大小不同化・円形・角状化あるいは細胞外液量の増加を、特に傍脊柱筋の棘突起からの剥離部に顕著に認めたことから、術後筋萎縮の一つの要因として筋組織の剥離に伴う脱神経の関与が示唆された。また、縦割群は従来群と比較して術後早期の炎症細胞の浸潤が少なかったことより、術後筋萎縮と炎症細胞浸潤との関与が以上より判明した。傍脊柱筋の棘突起付着部を温存する縦割術は、術後筋組織の変性変化を軽減できる手術手技の一つであることが示唆された。今後はこのラット縦割式椎弓切除モデルを用いて、さらに長期の術後経過を観察し、筋組織の萎縮・変性・再生の評価を行う必要があると考えられた。
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