本研究の研究計画の柱は、(1)臨床検体を用いたCD44/ADAM17発現様式の詳細な検討と、(2)ADAM17によるCD44のsheddingの機能解析の2つである。 1.臨床検体を用いたCD44/ADAM17発現様式の検討 骨軟部腫瘍におけるCD44の発現に関する報告は限られているが、研究代表者のマイクロアレイを用いたゲノム網羅的遺伝子発現解析のデータから、病理学的に紡錘形細胞や多形細胞を特徴とする、高悪性度の腫瘍にmRNAレベルでCD44の発現が高い傾向にあることが示された。平成22年度は既存の凍結保存検体に加え、整形外科手術の際に得られる新規臨床検体を用いて、凍結保存あるいは初代培養を行い、RT-PCR、Western blotting、免疫組織化学染色、細胞染色などによってmRNAレベル、および蛋白レベルでの発現解析を行った。マイクロアレイの結果同様、いくつかの高悪性度の腫瘍で発現が確認されたものの、骨軟部腫瘍は病理組織学的に非常に多彩であり、症例(腫瘍)間で発現にばらつきが大きかった。CD44の発現量に関しては、現在のところ、その臨床病理学的な意義までは解析が及んでいない。 2.ADAM17によるCD44のsheddingの機能解析 平成22年度より、既存の肉腫細胞株および樹立した細胞株を用いて、CD44の発現について解析を開始した。それら細胞株を用いて、ヒアルロン酸や種々のサイトカインによるCD44のsheddingを解析しなが、細胞株間でのCD44の発現、およびsheddingの様式は差があり、肉腫細胞株で一定の結果は得られなかった。また、CD44のsheddingが確認された細胞株において、sheddingと細胞形質の変化、および細胞内シグナルについて解析を進めた。現在は肉腫悪性度・転移能との関連に関し探索中である。
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