研究課題
哺乳類は、骨のリモデリングを調整しながら骨の恒常性を維持しているが、ここには様々な分子の関与が知られている。我々はその一因子として「酸化ストレスの蓄積」が骨量の低下を引き起こすのではないかと考え、酸化ストレス種の一つである活性酸素の処理を担うスーパーオキサイドディスムターゼ1(SOD1)の欠損マウス(SOD1KO)の解析を行った。このマウスでは、骨髄内での酸化ストレス種が上昇しており、骨量の著しい減少が認められ、骨芽細胞の細胞増殖の低下・アポトーシスの亢進による骨芽細胞数の減少と、骨形成率の低下が認められた。驚くべき事に、このマウスに抗酸化剤であるビタミンCを投与したところ、KOマウスにおける骨量の減少がレスキュー出来た。これらの成果は、2011年にJournal of bone and mineral researchに掲載された(Nojiri,Saita et al 2011 JBMR)。現在の骨粗鬆症治療の主な標的は破骨細胞による骨吸収活性の抑制であるが、既存の治療法に反応を示さない患者も多数存在する。そうした患者の中に、体内での酸化ストレス増加による骨芽細胞機能不全を伴った患者が存在する事も十分考えられ、我々はこうした患者に対する抗酸化剤の投与により骨量と骨質の改善が見込めるのではないかと予想し、臨床研究も計画中である。今後加速する高齢化社会において、寝たきりの主要因となる骨脆弱性骨折を予防するためには、加齢による骨粗鬆症の病態解明が急務であるが、我々の研究成果がその一因を解明する可能性を有しており、新たな骨粗鬆症治療の確立に寄与できるものと考えている
すべて 2011
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Journal of Bone and Mineral Research, pages 2682-2694, November 2011
巻: Volume 26,Issue 11 ページ: 2682-2694