研究概要 |
【目的】昨年度糖転移酵素galactose-β1,3-glucuronysltransferase-I(GlcAT-I)の椎間板発現やその機能調整につき報告したが,本年度は,椎間板代謝調節因子であるTGF-β/BMPシグナルによるGlcAT-Iの基礎的検討を新たに行ったので報告する.【方法】培養Rat髄核細胞(n=24)を用いた.まずTGF-β3,BMP2刺激後のGlcAT-I遺伝子,蛋白発現を検討した.次に3種類(GlcAT-I-D:-1170/+61)(GlcAT-I-M:-274/+61)(GlcAT-I-P:-123/+61)のreporterベクターを作成,pRL-TKベクターと共にtransfectionし,24時間後にTGF-β3,BMP2で刺激(24時間)しDual Luciferase Reporter Assayを用いそれぞれのGlcAT-I promoter活性を計測した.次に,GlcAT-I-Dのdeletion plasmidのみ存在する転写因子AP-1に注目し,DN(Dominant negative)-AP-1を用いGlcAT-I-Dのreporter活性を評価した.さらに,TonE siteがBMP2,TGF-β3刺激後のGlcAT-I-Dのreparter活性に反応するか検討するため,同様にしてDN-TonEBPを用いGlcAT-I-Dのreporter活性を評価した.site directed mutagenesis法によりAP-1,TonE siteのmutant reporter plasmid (GT-I-Mt1,GT-I-Mt2,GT-I-Mt3)を作製後,TGF-β3,BMP2刺激後のreporter活性を評価した.【結果】TGF-β3,BMP2刺激は椎間板細胞GlcAT-Iの遺伝子,蛋白発現を増加させた.GlaAT-I promoter活性の評価では,TGF-β3,BMP2刺激はGlcAT-I-D活性を約170%上昇させたが,GlcAT-I-,M,Pでは変化なかった.Loss of functionの実験からAP-1,TonEBPはGlcAT-I-D promoter活性を調節していた.さらにAP-1,TonE siteの欠失したmutant reporterではTGF-β3,BMP2刺激に反応しなかったのに対しGT-Wild-type(GT-Wt)では有意にreporter活性が上昇した,【考察と結語】TGF-β3,BMP2刺激は椎間板細胞におけるGlcAT-I活性を増加させた,これはAP-1,NFAT5(TonEBP)が椎間板のGAG合成に関わっている事が考えられた.転写因子AP-1は細胞の分化や増殖だけでなく,アポトーシスにも深く関わっているとされ,AP-1による複雑な細胞動態制御の解析には,その標的遺伝子の詳細な解析が必要である.今後,AP-1による標的遺伝子の制御が明らかにされる事により,椎間板細胞の増殖・分化・アポトーシス・さまざまな機能発現のメカニズムが明確に解明されるものと思われた.
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