本年度は、昨年度明らかにしたLECT2に結合する金属イオンと構造的情報から、生理活性の探索を主に行った。また、昨年度に引き続き、in vitroの培養細胞をつかい単純化した系について研究を実施した。具体的にはリコンビナントLECT2を直接軟骨前駆細胞ATDC5細胞などに作用させ、転写因子に着目して検討した。 1)LECT2の機i能に関する構造解析 LECT2はアミノ酸配列の相同性から亜鉛イオンを活性中心にもつタンパク質であるペプチダーゼM23のグループに分類されている。昨年度、LECT2は亜鉛結合タンパク質であることを明らかとした。本年度は、開始当初、LECT2の活性部位について探索を行うため、亜鉛イオンあり・なしの状態で活性に差異がみられるかどうかを探索した。しかし、亜鉛配位のアミノ酸と予測される3箇所のアミノ酸残基を点変異すると、哺乳細胞にトランスフェクションしても、LECT2のタンパク質発現が確認できなくなるアミノ酸残基があり、精製後の活性測定は実行できなかった。しかし、このアミノ酸残基は構造の安定化に重要であることが示唆された。 2)培養細胞を用いた遺伝子発現解析 軟骨前駆細胞ATDC5細胞に、CHO細胞由来のマウスリコンビナントLECT2を作用させて6時間後のRNAを調製し、アジレント社製のDNAマイクロアレイでの解析を昨年度に引き続き行った。変動がみられた遺伝子群について、どの転写因子の制御を受けているか調べることで、添加したLECT2のシグナル伝達の最終ポイントを探索した。その結果、ある転写因子の調節を受けている可能性が見出された。
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