前年度までの研究結果より、Notchシグナルを過剰発現させる事により、マウス小脳神経前駆細胞を単独で培養した場合よりも神経前駆細胞の生存率が低下する事がわかっている。特に培養開始から3-4日目の生存性が低下する事がわかった。本年度もマウス小脳神経前駆細胞のNotchシグナル過剰発現に伴う生存性を引き続き確認した。神経成長因子としてEGFやCNTFを添加する濃度やvirusベクターの投与割合、ベクターを投与する条件として培養開始からの経過時間を複数条件を変えて実験したが、Notchシグナルの発現量とマウス小脳前駆細胞の生存割合が共に扱いやすい状態に合致する条件を見つける事は出来なかった。ただしその実験から、Adeno virusベクターの投与量を減量する事によりマウス小脳前駆細胞の生存性はある程度維持される事が確認できた。また培養細胞中のNotchシグナルが発現する細胞について、各種マーカーの発現頻度を調べた。マウス小脳神経前駆細胞は、CNTFの投与によりNestinの発現量が減少し、一方でGFAPの発現量が増加する。これとNotchシグナルとの関連性を調べた所、Nestinの発現量については、Notchシグナルの発現により分化誘導因子でもあるCNTFの投与によっても保たれる事がわかり、GFAPの発現量に関してはNotchシグナルの発現により減少することが示唆された。また、マウス小脳前駆細胞では、Notchシグナルの標的遺伝子はHES5である事が示唆されたが、HES5のシグナル量と細胞の生存性に付いての関連性は、本研究では見つからなかった。
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