研究概要 |
今年度は次のことを明らかにした。(1)マイクロアレイ解析から見出された動的アロディニア発生遺伝子候補であるP2X4受容体は帯状疱疹痛期の脊髄後角ミクログリアで著明に発現が増加し,P2X4受容体拮抗作用を有する抗うつ薬パロキセチンの脊髄くも膜下腔内投与により動的アロディニアが抑制されたことから,ミクログリアで発現増加するP2X4受容体が動的アロディニアの発生に関与することが示唆された。(2)ニューロン興奮性マーカーc-Fos,ミクログリアマーカーIba-1, CD68,アストロサイトマーカーGFAPの脊髄後角における発現を調べ,脊髄後角ニューロンの興奮が帯状疱疹痛期でのみ顕著に上昇していること,ミクログリアの活性化も帯状疱疹痛期で特に顕著であること,アストロサイトの活性化は帯状疱疹後神経痛期においても活性化状態が維持されていることを明らかにした。(3)動的アロディニア発生における脊髄後角でのMAPKの活性化(リン酸化)の関与を検討し,ERKとp38MAPKの活性化が帯状疱疹痛期の動的アロディニアの発生に関与し,JNKの活性化は帯状疱疹痛期と帯状疱疹後神経痛期の両時期の動的アロディニアの発生に関与することを明らかにした。(4)マイクロアレイ解析結果から脊髄後角へのTリンパ球の浸潤を示唆する遺伝子発現変化がみられたことから,動的アロディニア発生へのTリンパ球の関与を検討した。脊髄後角へのTリンパ球の浸潤が帯状疱疹痛期でより顕著に観察され,リンパ球遊走阻害薬FTY720の投与により動的アロディニアの発生が抑制されたこと,帯状疱疹痛期マウスの脾臓から分離したヘルパーTリンパ球を健常マウスに脊髄くも膜下腔内投与することで動的アロディニアが生じたことから,脊髄後角に浸潤するTリンパ球,特にヘルパーTリンパ球が動的アロディニアの発生に直接的に関与する可能性が示唆された。
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