本研究の目的はハロセン-アドレナリン不整脈をモデルとしてその不整脈制御に関わる細胞内因子を同定することにある。 具体的にはラットをハロセンにて麻酔し、アドレナリンを静脈内投与し、除々に投与量を暫増、心室性不整脈の発生した投与量を持って不整脈閾値と定める。不整脈閾値が高くなることは不整脈が出にくい、つまり抗不整脈的と評価した。 この不整脈モデルにて脳内にイミダゾリン受容体刺激薬のリルメニジンを投与すると迷走神経を活性化し、抗不整脈作用をもたらす。この抗不整脈作用に関与する細胞内因子を同定することで、不整脈に関与する因子の同定を行った。対象とする因子としては百日咳毒素感受性G蛋白、phosphatidylinositol 3-kinase(以下PI3K)、Akt、glycogen synthase kinase 3β(以下GSK-3β)、mitochondrial permeability transition pore(以下mPTP)、NO合成酵素とし、まずそれぞれの因子の拮抗薬を用いた薬理学的な手法にて関与する因子を同定した。続いて、リルメニジンの脳内投与1時間後にラット心筋を切り取り、ウエスタンブロットを行い、対象因子のリン酸化と量的な変化を測定した。 ハロセン-アドレナリン不整脈の抑制に関与する細胞内因子としては百日咳毒素感受性G蛋白質、phosphatidylinositol 3-kinase、Akt、glycogen synthase kinase 3β mitochondrialさらには内因性、NOであることを示した。さらに、イミダゾリン受容体刺激薬のリルメニジンを脳内に投与に伴い、Akt、glycogen synthase kinase 3βのリン酸化が有意に増加しており、これらの蛋白のリン酸化が抗不整脈作用をもたらすことを示した。
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