研究開始初年度の21年度中には、まず患者DNA解析をする上での倫理的問題点について検討した。GABA受容体の遺伝子多型が自殺、統合失調症の疾病率に関連するとの報告もあるが、現段階では一般的なコンセンサスは得られておらず、患者個人の遺伝情報自体を各患者に知らせることは利益とならないと判断した。このことを当大学倫理委員会に諮りながら、患者の権利が損なわれないよう十分な説明ができるように、また個人情報管理が国内の指針に照らし合わせても問題とならないよう準備をおこなった。 臨床データを取るうえで、最適となるようなプロポフォール投与速度の検討が必要であった。Target Controlled Infusion対応シリンジポンプで投与速度を検討し、個人差が比較しやすく安全に麻酔導入可能な投与速度を決定した。DNA抽出するに必要となる装置、器具、消耗品に関して準備し実際にDNA抽出が可能なことを確認した。 遺伝情報解析のためには巨大なDNA構造の中の一部分を選択する必要があるため、その候補領域の選択をデータベースと文献から検討した。 以上の結果、実際にDNAサンプルを用意すれば解析が開始できるところまで達したが、解析を行う上では50サンプル程度またはそれ以上のサンプルを一度に解析する方が効率的かつ経済的であるため、現在のところ解析作業は開始していない。 今後は、本研究への参加を募り、患者から得られた血液サンプル数が集まった段階で遺伝子解析を進める予定である。また、DNA解析の結果が得られるまでに、意識消失に必要なプロポフォールの量が年齢、性別、疾患、術前検査結果とどのような関係があるのかについても検討する予定である。
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