レミフェンタニル(RF)は超短時間作用性のオピオイド鎮痛薬であり全身麻酔で広く使用されているが、時に急性耐性を起こすことが知られている。この研究では、RF刺激によるμ-オピオイド受容体(μOR)および二量体化μ-δオピオイド受容体の細胞内動態ならびにシグナル解析を行い、急性耐性形成の分子機構と、それにおける二量体受容体の役割を明らかにする。 (1) クローン化μORならびにδ-オピオイド受容体(δOR)のC末に黄色蛍光蛋白(Venus)と青色蛍光蛋白(Cerulean)をそれぞれ連結し、Baby hamster kidney cellに発現させた。これを様々な濃度のRFで刺激し、受容体二量体化とinternalization/recycling機構を共焦点レーザで解析した。Fluorescence Resonance Energy Transfer(FRET)アッセイで、刺激前、internalization後、recycling後のμORとδORはいずれもヘテロ二量体を形成していた。Recycling機構の解析では、μOR、μ-δORのいずれも高濃度のRFでRecyclingが阻害された。また、同濃度で比較すると、二量体化μ-δORはμORより高濃度ではRecyclingされやすかった。これらより、μORおよびμ-δORのRecycling障害が高濃度RF投与による急性耐性の一因である可能性が示唆された。また、二量体化μ-δORはμORよりも急性耐性を起こしにくいかもしれない。 (2) 今後は、μOR-Gqi5とδOR、δOR-Gqi5とμORを用いたカルシウムイメージング(二量体化受容体活性のみをアッセイ)などを行い、耐性を起こさないRFの使用法を同定するための基礎データをさらに蓄積したい。また、RF+ケタミン併用におけるオピオイド受容体の細胞内動態についても同様に検討したい。
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