研究概要 |
本年度においては,まず,平成21年度より行っていた当施設心臓血管外科手術後患者におけるTCD測定値とrSO2測定値の変化ならびに術後せん妄や認知機能低下の発生率に関するデータ結果の解析を行った。さらに平成22年度に引き続いて,心臓手術周術期において2つの非侵襲的脳循環モニターであるTCD装置とrSO2測定装置を併用し,その測定値を指標として脳循環に積極的に介入することで,心臓手術後せん妄および認知機能低下の発生を減少するか否かの介入試験を行った。これまでと同様に,心臓大血管手術患者において,rSO2維持介入群と非介入群に,無作為に2群に分けた。介入群では,TCD測定値とrSO2測定値より脳血流低下が考えられた場合は1、人工呼吸器調節による呼気終末二酸化炭素分圧の正常化2、人工心肺のポンプ流量調節3、脳潅流圧低下に対して昇圧剤を投与4、心係数低下に対して強心剤を投与5、脳血管抵抗増加に対して脳血管拡張薬を投与6、貧血補正による調節を行った。また,TCD測定値とrSO2測定値より脳血流低下を認めない場合は(1)BIS値を見ながら麻酔深度を調節(2)体温を37℃前後に維持できるように調節した。これらの介入回数や介入時間などを記載し,さらに,術後せん妄の有無・認知機能低下の有無などを詳細に記載した。現時点で目標症例数に達しており,平成22年度に施行された患者データと合わせて現在詳細な分析を行っている段階である。本年度は最終年度でもあり,平成21年度より行っていた当施設心臓血管外科手術後患者における術後せん妄や認知機能の発生率の検討結果だけでなく,平成22年度ならびに本年度に引き続いて行ってきた積極的脳循環維持による心臓手術後せん妄および認知機能低下予防効果の検討結果も加えて,総合的な検討を行い,今後学会発表並びに論文作成を行う予定である。
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