目的は、水素ガスの脳保護作用とフリーラジカルの関係を検証し、水素ガス投与が脳のエネルギー代謝にどのように影響するかを明らかにすることである。 ニューロンは内部にヒドロキシラジカルの強い捕捉剤となるグルコースを少なくとも1mM程度持っていると考えられ、これと63.8ng/mlの水素ガス含有液のラジカル捕捉能を比較した。コントロールとのESR信号相対値で、水素97%、グルコース89%で有意にグルコースの捕捉能が勝った(p<0.05)。 また、ラットの脳スライスを用いて、^<31>P-NMRによる高エネルギーリン酸化合物の測定を行った。現在、様々なモデルで検討中であるが、虚血再灌流モデルと高カリウム負荷モデルの結果を示す。水素投与群と非投与群の2群に分けた。前者のモデルにおいて、負荷後1~2時間のγ-ATPレベルは水素投与群の方が有意に高かった(p<0.05)。後者のモデルにおいて、負荷直後のクレアチンリン酸レベルは水素投与群の方が有意に高かった(p<0.05)。後者のモデルでは、負荷をかけても最終的には高エネルギーリン酸化合物は負荷前と同じ程度まで回復しており、細胞傷害を起こすほどのヒドロキシラジカルの発生はないと考えられる。 この実験により水素ガスがヒドロキシラジカルを捕捉して脳保護作用を及ぼすと考えるには捕捉能が弱すぎる点、水素ガス投与がラジカルがあまり関与していない環境下でもエネルギー代謝に影響を及ぼしている可能性がある点を考慮して今後の実験をすすめる予定である。
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