サイトカインは様々な生体現象に関わることが近年明らかになってきており、治療のターゲットとしても注目されている。その作用には催眠作用があることが知られている。感冒症状に伴った眠気はサイトカインが原因と考えられている。IL-1β、TNFαがノンレム睡眠を促進し、中枢神経活動に対して中心的な役割を果たすが、他のサイトカインも何らかの睡眠への影響を有している。アセチルコリンは大脳皮質において睡眠-覚醒レベルの変化に主要な役割を担う神経伝達物質である。申請者はこれまでラットの大脳皮質におけるアセチルコリンニューロンの活動変化を様々な麻酔薬について調べてきた。この方法を応用し、サイトカインによる催眠作用がアセチルコリンニューロンの活動に関係するのかどうか調べた。 Wistar Ratに頭蓋骨にドリルで穴をあけ、そこにダミーカニューラを挿入して一晩おき、次の日に実験を行った。カニューラを抜いてMicrodialysisのプローブを留置し持続還流を行った。大脳皮質から回収した還流液を高速液体クロマトグラフィーで解析した.1時間のコントロールデータを取ったあと、Lipopolysaccharide(LPS)を腹腔内に5mg/kg投与し、その後のアセチルコリンレベルの変動を見た。 ラットは明らかに行動が鈍くなり、活動性は低下した。しかしながらアセチルコリンの変動に有意な差は見られなかった。睡眠覚醒を制御する神経伝達物質はノルアドレナリン、ヒスタミンなど他にも存在する。今回の結果からはサイトカインによる催眠作用はアセチルコリン以外の伝達物質を介していることが示唆された。 重症感染症に伴う意識レベルの低下などにも関連すると思われ、全貌を明らかにするにはさらなる追求が必要である。
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