本年度の課題は、虚脱肺の再換気が肺および全身に及ぼす影響の解明であったが、モデル作りに難渋したため、研究予定に遅れを生じ、昨年度の課題であった一側肺換気を行ったときに虚脱肺で起こる変化の解明に時間を費やした。昨年度同様モデル動物をマウスからラットに変更して実験を行った。一側肺換気自体は安定して行えるようになったが、生理的パラメーターである血圧や血液ガスの測定を確実に行うために、動脈のカニュレーション手技を腹部大動脈から、大腿動脈に切り替えて実験を行った。大腿動脈のカニュレーションは繊細な手技であり、顕微鏡下に行ったが手技の安定に多くの時間を費やした。モデル作成がようやく整ったというのが現時点での成果である。今後、このモデルを用いてデータ採取・解析を進めていく予定である。また、並行して、昨年度に腹部大動脈カニュレーションモデルから得られた検体の肺の組織解析、血液および肺胞洗浄液中の炎症性メディエーターの測定を行ったが、虚脱肺に炎症を伴った急性肺損傷像は見られたものの、炎症性メディエーターのデータは安定した結果を得ることはできなかった。研究予定期間も1年程度であるため、今後は一部研究計画を変更して行く必要がある。虚脱肺に急性炎症性変化が生じることは確実となったので、原因となる炎症性メディエーターの解明を急ぎ、それに対して抗体などでのブロックを行い肺損傷の軽減させる方法を探求する予定である。また、当初予定していた実際の臨床で一側肺換気を用いて行う手術症例からの検体採取、解析に関しては時間的余裕がなく施行できない可能性がある。この場合は再度研究費の申請依頼を行い遂行していきたいと考えている。
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