研究概要 |
補体受容体complement receptor 3(CR3: CD11b/CD18)はiC3bをリガンドとし、標的細胞の貪食に関与するほかミクログリアマーカーとして広く用いられている。一方complement receptor 4(CR4:CD11c/CD18)のサブユニットであるCD11cはマクロファージや脳内ミクログリアの極性(M1:炎症性/M2:抗炎症性)を示すことが分かっている。CR3欠損マウスでは海馬へのミクログリア浸潤が減少していることから、補体受容体は貪食だけでなく遊走能にも関与し、間接的にミクログリアの活性化や極性を制御しているものと仮定した。まず、初代培養ミクログリアのLPS/IFN-γ刺激による極性変化を検討したところ、CD11c、CCR2,TNF-α、IL-1βなどの炎症性マーカーが誘導されたが、PPARγアゴニストであるrosiglitazoneで前処理したところ、これらの発現が優位に抑制された。またMCP-1に対する遊走も抑制された。今後はrosigitazone刺激下におけるミクログリアの補体に対する感受性、貪食能を検討する。さらにミクログリアを脳虚血モデルマウスの脳内に移植することにより、その極性と神経保護作用を検討し、神経幹細胞の増殖をはじめとする神経再生への作用を明らかにする。また補体受容体欠損マウスの解析から補体シグナルのミクログリア極性における意義を見出し、脳虚血・炎症性疾患の治療に役立てたいと考えている。
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