研究概要 |
ミクログリアは骨髄細胞から分化した血中単球が脳内に浸潤したマクロファージ系細胞である。このことは神経系のみに局在する神経細胞やグリア細胞とは異なり、末梢での細胞制御が可能であることを意味する。ミクログリア、マクロファージの制御における補体受容体シグナルの役割と、神経保護作用のメカニズムを明らかにし、神経変性疾患、脳虚血、疼痛などの治療への応用の目的で本研究を行った。 神経変性疾患、脳虚血、疼痛形成にも関与する炎症の遷延化は末梢マクロファージのみでなく、脊髄ミクログリアの活性化による炎症性物質の活性化が持続し、さらなる炎症の助長と神経細胞のシナプス形成異常をもたらす。同時にBDNFなどの神経栄養因子を産生する。つまりマクロファージは神経傷害と神経保護の相反する作用を有する。 補体受容体のサブユニットであるCDllcはマクロファージの極性マーカー (炎症性のM1マクロファージはCDllc+,抗炎症性のM2はCDllc-) であり、補体受容体シグナルがマクロファージの性質あるいは分化を制御する因子であることが指摘されている。これまでの研究から、糖尿病など抗炎症作用を介して臨床応用されているPPARgammaのシグナルが、マクロファージの極性をM1からM2優位にすることが分かっているため、補体受容体シグナルとのクロストークが想定される。 マウスでの疼痛モデル、虚血モデルを用いてPPARgamma(Rosiglitazone)群でのCDllcをはじめとする細胞マーカー、補体受容体シグナルの活性化と神経保護作用の関連を現在解析中である。
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