申請者らは、難治性疼痛に対する新たな鎮痛薬の開発に貢献するため、電位依存性ナトリウムチャネル(Na_v)に関する疼痛機構を分子レベルで解析することを計画した。具体的には、1)アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた種々の野生型Na_vαサブユニットに対する吸入麻酔薬・鎮痛薬の影響解析、2)遺伝子変異株による同薬物のNa_vにおける作用部位の同定、3)遺伝子変異マウスを用いた行動薬理学的解析、4)遺伝子変異マウスDRG細胞を用いたパッチクランプ法によるNaVへの影響解析、である。 平成22年度も、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた種々の野生型Na_vαサブユニットに対する吸入麻酔薬・鎮痛薬の影響解析を行った。昨年同様にアフリカツメガエル卵母細胞に発現させることに成功している、脳神経に多く分布するNa_v1.2、筋肉型のNa_v1.4、脊髄に多く分布するNa_v1.6、Na_v1.8の4種類のサブユニットに加え、疼痛機序への関与が強く示唆されているNa_v1.7の発現にも成功し、これらを用いた解析を行った。プレグネノロン硫酸塩(PS)、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩(DHEAS)、DHEAの3つのニューロステロイドが、Na_v1.2の機能を抑制することを既に確認し、投稿準備中であるが、さらに、ニューロステロイドの中で最も鎮痛作用が強いとされる、プレグナノロン硫酸塩(PAS)、アロプレグナノロン硫酸塩(APAS)が、疼痛機序に深く関与するNa_v1.6、Na_v1.7の機能を抑制することを電気生理学的に確認した。これらの結果は、PAS、APASの鎮痛作用のメカニズム一つが、Na_vの抑制である可能性を示唆している。今後、その他のサブユニットに対するPAS、APASの影響も調べ、サブユニット間における作用の違いを比較し、PAS、APASのNa_vにおける作用部位を分子レベルで同定する予定である。
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