研究概要 |
臨床応用する上で重要な投与経路について、経口摂取による有効性を調べるためポリフェノールを全身投与し短時間処置での鎮痛作用を調べた。8週齢の無処置雄SDラットを用いて4種類のポリフェノールcatechin[(flavan-3-ols)10,20 50mg/kg]、quercetin hydrate[(flavonol)10,20,50mg/kg]、naringenin[(flavanone)10,30mg/kg1、curcumin(10,50mg/kg)を腹腔内投与した。血中及び中枢神経系内の濃度が最高となる投与15分及び30分後に以下の実験を行った。1.侵害性熱刺激に対する作用:(1)Tail flicktest:尻尾の中央1/3の部分に放射熱を当てた。薬物投与前の基準値が4-5秒になるよう放射熱の強さを調節した。(2)Hot plate test:52.5℃の熱板に乗せ、後肢を舐める・振り回す・跳び上がるまでの潜時(秒)を測定した。2,侵害性機械刺激に対する作用:Paw pressure test:後肢第3/4趾間に32g/secで加圧した。啼くまでの閾値(g)を測定した。cut-off:500g 3,侵害性化学刺激に対する作用:Formalin test:5%formalin 50mLを片側の後肢足底に注入した。注入した後肢を引っ込めるまたは振り回す回数を10分間隔で1分間カウントした。注入後10分までを第1相、10分から60分までを第2相とした。その結果、4種類のポリフェノールは上記4種類の侵害テストにおいていずれも抗侵害作用を示さなかった。これは薬物の中枢神経系への移行が少ないことによると考えられ、投与量を増やして再度実験を行う必要がある。次に作用部位及び機序について調べるため侵害受容伝達で重要な部位である脊髄後角にポリフェノールを投与した。ペントバルビタール(60mg/kg腹腔内投与)麻酔下に6週齢の雄SDラットのくも膜下腔にYakshらの方法により大槽からポリエチレンカテーテル(PE-10)を尾側に向かって約8cm挿入した。1週間後に神経学的異常のないラットを用いて実験を行った。Catechinとcurcuminを10、50μg(10μL)を髄空内投与し、4種類の侵害テストを行ったが影響は見られなかった。これらの薬物に関しては正常ラットにおいて抗侵害作用を持たないことが分かった。
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