研究概要 |
臨床で治療に難渋し慢性痛の原因となっている神経障害痛に対する新規治療薬の開発を目的とした研究を行った。6週齢の雄SDラットで神経障害性疼痛モデルを作成した。髄腔内投与のためクモ膜下腔に大槽からポリエチレンカテーテル(PE-10)を尾側に挿入した。本年度は脳内での作用を併せて検討した。脳室内投与のため右側脳室に22Gのステンレス製のガイドカニューレを頭頂骨より4.0mm挿入し、歯科用セメントとアンカースクリューで頭部に固定した。処置1週間後に29Gの注入用カニューレにPE-20を接続しマイクロシリンジで注入した。脊髄および脳での作用を検討するためポリフェノール類のナリンゲニン、クエルセチン、ルテオリン、ダイゼイン、クロロゲニン酸50,100,200mg/ml DMSO溶液を10μl髄腔または側脳室に注入した。モデルで発現した熱性痛覚過敏と機械的アロディニアに対してナリンゲニン、ルテオリン、クロロゲン酸はプランター試験では鎮痛作用を示さなかったがフォン・フライ試験では用量依存性に逃避反応の閾値を上昇させた。ダイゼインは両試験とも疼痛閾値を低下させた。クエルセチンについては鎮痛作用に関する報告が多数存在したため研究対象から除外した。一方、脳室内投与ではナリンゲニン、ルテオリン、クロロゲン酸、ダイゼインは両試験の反応閾値に影響を与えなかった。これらの結果から髄腔内に投与した場合のみナリンゲニン、ルテオリン、クロロゲン酸は機械的アロディニアに対して抗侵害作用を示し、熱性痛覚過敏に対しては無効だった。本研究で調べたポリフェノール類は神経障害痛に対して脳では作用せず脊髄における侵害受容伝達を抑制して弱い鎮痛作用を発揮することが示唆された。
|