研究概要 |
代償性肥大(片腎摘除後に残腎が腫大し腎機能が亢進する現象)に注目して研究を進めている。すでに我々は代償性肥大を起こす生体腎移植ドナーから摘出された移植腎機能は、代償性肥大がないドナーから摘出されたそれと比較して有意にその移植腎機能は良好、という結果を得ている(Saito M et al, American Transplant Congress 2007)。この結果をもとにIGF-1やGHといった組織増殖因子(やその受容体)の遺伝子多型が、ドナーの残腎代償性肥大発生に関与するかどうか、そしてそれらが移植腎機能や生着率に与える影響などについて解析を行っている。またドナーの予後調査も行い、残腎代償性肥大発生がドナーの腎機能や生命予後に与える影響などについても併せて検討中である。 今までに、(1)当科で腎採取術を受けた生体腎移植ドナーの採血時に採取した白血球からDNAを抽出(約200症例)し、IGF-1、GHとそれらの受容体の遺伝子多型について約半数症例の解析終了、(2)ドナー腎摘出後の腎生検標本における、組織増殖因子(とその受容体)の免疫染色ではほとんどの標本が陰性(評価不能)、などの結果が得られた(組織切片が小さすぎることが影響した可能性があり、今後はmRNAの発現量などで評価すべきかもしれない)。 今回の研究によってドナー側の代償性肥大に関する様々な因子から、移植腎機能や術後のドナーの残腎機能が術前に推測可能であれば、術前腎機能が移植適応の境界領域にあるドナーの適応拡大に繋がる可能性がある。これは献腎移植が少なく、ドナーソースとして生体腎移植に頼らざるを得ない我が国の移植事情において大きな福音となり、社会へ大きく貢献できるものと信じている。
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