研究概要 |
アンドロゲン環境を変えた培地における前立腺細胞株の増殖速度:アンドロゲン依存性のLNCaPではDHEA-S, DHT, testosteroneの各々につき濃度依存性の増殖変化が見られた。アンドロゲン低依存性の22RV1とVCaPでは増殖に差は認めなかった。PSA及びklk-2, klk-4, klk-15の産生は何れの細胞においてもDHEA-S依存性、DHTとtestosteroneに関してはLNCaPでは濃度依存性、22RV1とVCaPでは10^<-8>-10^<-9>mol/lの低濃度では濃度依存性であった。これらの結果からアンドロゲン環境の変化による各細胞株の増殖変化とPSAに代表されるカリクレインの産生変化が明らかとなった。アンドロゲン環境の変化と前立腺癌細胞株の細胞周期関連マーカー:Real-time PCRを用いた検討ではLNCaPでは何れのアンドロゲンも10^<-9>mol/l以下とした際に細胞周期G2停止を示唆するCyclinD1の発現増加を認め、p21/p53経路の活性化とp27の発現増加が認められたが、ATBF1に関しては有意な発現の増加は認めなかった。Cell blockの免疫組織化学を用いた検討で、22RV1とVCaPではLNCaPに比し、通常のアンドロゲン環境下でATBF1の核内発現が減少していることが示された。ここまでの研究より、アンドロゲン依存性が高い前立腺癌ではアンドロゲン依存性のカリクレインなどの分子の発現とともに細胞増殖や細胞周期もアンドロゲン依存性である可能性が示唆された。一方、アンドロゲン依存性が低い前立腺癌細胞ではアンドロゲン依存性の分子の発現は特定のアンドロゲン濃度で発現が高くなり、細胞増殖/細胞周期はアンドロゲンの影響を受けにくいことが示された。ATBF1の核内発現は前立腺癌のアンドロゲン依存性に関与すること考えられ、悪性度にも関わる可能性が示唆された。本研究は以下に示すように副次的研究成果も多くこれらはすでに論文発表または掲載許可が得られている。
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