研究概要 |
前立腺癌細胞において放射線に応答する人工プロモーターを構築し、前立腺癌治療における臨床応用への可能性を検討した。まず、文献的に前立腺癌細胞において放射線で活性化する転写因子を検索し、NFkB, AP-1, Oct-1, p53, StREの5つの転写因子を選択した。これらの転写因子結合配列をランダムに結合し、TATA boxと組み合わせることで人工プロモーターを多数構築した。これらの人工プロモーターの制御下にルシフェラーゼ(luc)を発現するプラスミドを構築し、ヒト前立腺癌細胞株LNCapに導入して、lucアッセイにより放射線による人工プロモーターの反応性を調べた。その結果、クローン880と名付けたプロモーターにおいて、放射線の照射により約6.67倍と高い発現増強が見られた。さらにクローン880を鋳型に、変異導入型PCR法でランダム変異を導入することで、約10.4倍とさらに高い放射線による発現増強を示すクローン880-8プロモーターを取得した。レトロウィルスベクターでLNCapに遺伝子導入を行い、クローン880-8制御下にlucを発現するLNCap-880-8-lucを樹立した。放射線の反応性を調べたところ、高い増強活性を認めた。ヌードマウスにこの細胞を接種して、放射線による反応性を調べたところ、in vivoにおいても放射線による有意なlucの発現増強を認めた。次に構築した人工プロモーターの治療応用への可能性について検討するために、クローン880-8の制御下に自殺遺伝子であるFcy::Fur遺伝子を発現するLNCap-880-8-Fcy::Furを樹立した。樹立した細胞に放射線を照射し、イムノブロット法にて放射線によるFcy::Furタンパクの発現増強を確認した。この細胞に5-FCを投与したところ、放射線を照射したときのみ、5-FC添加濃度依存的な殺細胞効果の増強が確認された。
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