前立腺癌において放射線で活性化するとされる転写因子の結合配列をランダムに組み合わせ、TATA boxを結合させ人工プロモーターを構築した。構築したプロモーターのうち最も放射線に対する反応性が高かったものにランダム変異を導入し、反応性の改良を試みた。その結果Clone880-8において、放射線に対して最も高い反応性が得られた。レトロウイルスを用いてヒト前立腺癌細胞株LNCapに遺伝子導入し、ルシフェラーゼをclone880-8の制御下に発現する細胞を樹立した。この細胞においてX線10Gyの照射にて9.12±0.36倍のルシフェラーゼの発現増強を認めた。この細胞をヌードマウスに接種して腫瘍を形成し、X線10Gyを照射したところ、照射しない場合と比較して4.27±1.36倍のルシフェラーゼの発現増強を認めた。LNCapに遺伝子導入を行いclone880-8の制御下にfcy::fur遺伝子を発現する組み換え細胞を樹立したところ、X線の照射にてfcy::furの発現が増強された。この細胞において5-FC投与における殺細胞効果の放射線による増強を認めた。これらの結果から、放射線応答性プロモーターを用いた遺伝子発現制御が遺伝子治療において有効な方法であると考えられた。
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