研究概要 |
尿路胴石症は泌尿器科領域において頻度の高い疾患であるだけではなく、時に重篤な合併症をきたす重要な疾患である。経過観察が可能な尿管結石症に対しては自然排石を期待する保存的治療が推奨されているが、同治療で使用される薬物の臨床効果に十分なエビデンスは認められていない。そのため自然排石促進作用や疝痛発作抑制作用を有する薬剤の開発が急務とされている。そこで、ヒト尿管におけるβ-アドレナリン受容体のサブタイプの発現・分布やその機能について基礎研究を実施し、β-アドレナリン受容体作動薬が尿管結石症の新たな治療戦略となる可能性があるか検討した。 ヒト摘出尿管を標本としてRT-PCR法によりβ-アドレナリン受容体の各サブタイプ(β1,β2,β3)のmRNAの発現について検討したところ、いずれのβ-アドレナリン受容体のサブタイプ(β1,β2,β3)も尿管組織に発現していることが確認された。現在、標本数を増やして定量的解析を計画中である。次いで、摘出尿管の顕微鏡的正常部分のブロックからパラフィン切片を作成し、免疫組織化学染色法を用いてβ-アドレナリン受容体の各サブタイプの発現部位を同定した。各サブタイプともに尿管上皮細胞ならびに平滑筋細胞での発現を認めたが、特に、平滑筋細胞においてはβ3-アドレナリン受容体の発現が顕著であると思われた。尿管平滑筋条片を用いたin vitroでの薬理学的実験(等尺性弛緩実験)では、β-アドレナリン受容体の非選択的作動薬であるイソプロテレノールに対して濃度依存性に平滑筋切片は弛緩した。現在、β-アドレナリン受容体の各サブタイプに対する選択的作動薬や拮抗薬による作用を確認しているところである。
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