研究概要 |
本年度は、申請者が常用してきた癌間質モデルurogenital sinus mesenchyme (UGM)の代替細胞として、市販の正常ヒト前立腺ストローマ細胞PrSC(Lonza社)が腫瘍形成を促進させるか否かを検討した。さらに、PrSC由来KGF/FGF-7の産生が阻害される条件、もしくは阻害する化合物の探索を行った。 【検討1】まず、mRNA発現の解析から、PrSCはvimentin (+), collagen (+), tenascin-C (+), αSMA (+), myosin (-), desmin (-)といった線維芽細胞~筋線維芽細胞の性質を有していることを確認した。 【検討2】次に、in vivo腫瘍形成試験において、PrSCはアンドロゲン感受性ヒト前立腺癌由来培養細胞LNCaPとその亜株E9(アンドロゲン低感受性)、AIDL(アンドロゲン不応性)の腫瘍形成を有意に促進することを確認した。よって、ラット胎児から採取していた癌間質モデルUGMの代替細胞として、市販の培養細胞PrSCが使用可能と判断した。 【検討3】PrSCを性ステロイドホルモン(DHT, E_2)、サイトカイン(TGFβ, SHH)、アドレナリン受容体アゴニスト(PE)で処理したところ、TGFβ処理群でのみKGF/FGF-7mRNAの有意な発現減少を確認した。TGFβは線維芽細胞に筋様の細胞分化を誘導することが知られたサイトカインである。よって、前立腺癌周囲に線維芽細胞や筋線維芽細胞が多いかどうかが、癌の増殖過程にKGF/FGF-7が強く関与するか否かが決まると考えられた。
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