アンドロゲン非依存性前立腺癌のアポトーシス誘導時におけるアンドロゲン受容体の役割について検討する目的で、本年度は、LNCaP細胞をホルモン枯渇条件にて維持することにより得たアンドロゲン不応答性のAIDL細胞およびLNCaP細胞を限外希釈することにより得た低アンドロゲン感受性のLNCaP-E9細胞のアンドロゲン感受性の低下の原因について解析を行った。AIDL細胞のアンドロゲン受容体はwild-typeのアンドロゲン受容体に比べ、リガンド結合部位の2か所(W741CとT877A)に変異が認められた。また、ジヒドロテストステロンでLNCaP細胞を刺激した場合、刺激後12時間および24時間後においてアンドロゲン受容体タンパク質量の増加が観察されたが、AIDL細胞では増加が認められなかった。一方、LNCaP-E9細胞のアンドロゲン受容体はLNCaP細胞のアンドロゲン受容体との間に遺伝子変異は認められなかった。また、LNCaP-E9細胞のPDK1およびAktのリン酸化の程度はLNCaP細胞に比べ低下していた。LNCaP細胞にPI3K阻害剤であるLY294002を作用させた場合、アンドロゲン応答性の低下が観察された。以上の結果から、AIDL細胞ではアンドロゲン受容体の変異もしくはアンドロゲン受容体のタンパク質安定性の変化がアンドロゲン応答性の変化に関与している可能性が示唆された。また、LNCaP-E9細胞ではPI3K-Akt系の抑制がアンドロゲン応答性の変化に関与しているものと考えられた。
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