膀胱の排尿機能は末梢、中枢の神経路を介して複雑に制御されている。過活動膀胱において、この制御のどこに不具合が生じることが原因となりうるのか不明な点も多い。蓄尿相で膀胱壁が徐々に進展され、その程度によって膀胱平滑筋の興奮の発生や伝播に変化が生じるのか、またそれが、過活動膀胱など機能障害に陥った膀胱では傾向が異なるのか、を調べることを目的とした。モデル動物において、正常膀胱から採取した膀胱平滑筋標本に蓄尿時に受けるような生理的な速度での進展刺激を加えていきつつ、細胞内電位記録を行って、この活動電位の発生が進展によって変化を受けるか否かを検討した。 細胞内電位記録法は微少ガラス電極を細胞内に刺入することで膜電位を計測するため、物理的に収縮する平滑筋細胞などでは計測が容易ではない。これまで平滑筋細胞の電位変化を記録するためチャンバー内での標本の固定方法を工夫することでこれを行ってきた。進展刺激を加えるため標本を進展すると細胞の位置が微妙に変位するため持続的に記録をとることがさらに困難となる。このためWortmanninを使用し平滑筋自体の自発収縮を抑えるなど工夫をしている。しかしやはり伸展時の変化を経時的に記録することは達成されていない。固定して経時的な伸展を加えない時点での標本では微妙な進展度合いにより活動電位の発生頻度にある程度傾向があるため、進展されていくと活動電位の発生頻度が上昇し、場合によっては蓄尿により興奮性が高まっている可能性も想像しており、今後さらに固定方法を工夫することで進展刺激による膀胱の興奮性の変化について考察する必要がある。また等尺性張力測定を応用することも検討する。また過活動膀胱での興奮性の変化についても検討する。
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