まず、SERCA2遺伝子導入ラットの膀胱においてSERCA2タンパク発現量をWestern blotting法を用いて検討した。wild type (WT)ラットの膀胱と比較してtransgenic(TG)ラットの膀胱ではSERCA2タンパクの発現量が有意に増加しており、膀胱においても十分にSERCA2遺伝子導入が達成されていると考えられた。また、TGラットの中でもSERCA2タンパクの発現量には個体差が認められた。この発現量の差は遺伝子型によるものの可能性があり今後検討を行っていく予定である。次に無麻酔拘束下膀胱内圧測定法によりWTラットとTGラットにおける膀胱機能の相違を検討した。WTラット5匹、TGラット10匹で検討を行ったところ、TGラット4匹(SERCA2タンパク発現量が多い群)においては、WTラットと比較して機能的膀胱容量が減少していた。これより膀胱でのSERCA2タンパクの発現量が増加することにより膀胱容量が減少し、蓄尿機能が障害される可能性都示唆された。 次に、尿道に部分閉塞を加えることによるWTラット群、TGラット群の下部尿路機能への影響を検討した。WTラットの心筋においては出口部閉塞を加えることにより心機能が低下し、SERCA2の発現量も低下するとされている。しかし、WTラットの膀胱においては明確な報告はない。そこで、WTラットの膀胱出口部部分閉塞partial bladder outlet obstruction (pBOO)モデルを作成し、SERCA2のタンパク量の変化を定量した。作成後2週間の時点で、WTラットのpBOOモデルの膀胱ではWTラットの膀胱と比較して有意にSERCA2タンパクの発現量が増加していた。これは心筋における変化とは異なる結果であった。
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