無麻酔拘束下膀胱内圧測定法によりwild type(WT)ラット(n=10)とtransgenic(TG)ラット(n=10)における膀胱機能の差異を検討した。TGラット群の4匹は他のTGラット6匹と比較して明らかに膀胱容量の減少、排尿回数の増加を認めた。(p<0.001)、また摘出膀胱にて膀胱壁の肥厚を認めた。この結果により、TGラットを膀胱壁肥厚群(n=4)と膀胱壁非肥厚群(n=6)にわけ、WTラットとともに3群でWestern blotting法により膀胱でのSERCA2蛋白の発現量を比較した。結果は膀胱壁肥厚群が他の2群より有意に膀胱でのSERCA2蛋白量の発現が増加(p<0.05)していた。よって膀胱でのSERCA2蛋白の発現量が増加することにより膀胱壁が肥厚、膀胱容量が減少し、膀胱機能が低下する可能性が示唆できた。 次に、尿道に部分閉塞を加えた場合にWTラット群、TGラット群でどのような変化が観察されるかを検討した。WTラット、TGラットの膀胱出口部部分閉塞partial bladder outlet obstruction(pBOO)モデルを作成し、作成後2週間でSERCA2の蛋白量の変化を比較した。比較はWT群(n=5)、WTpBOO群(n=5)、TGpBOO群(n=5)の3群で比較した。結果はWTpBOO群、TGpBOO群の膀胱ではWTの膀胱と比較して有意にSERCA2蛋白の発現量が増加していた(p<0.001)。WTpBOO群、TGpBOO群の間にはSERCA2蛋白の発現量に差はなかった。TGラットにおける膀胱壁の肥厚とpBOOラットにおける膀胱壁の肥厚過程は異なっていると考えられるが、両者ともSERCA2蛋白が有意に増加していることより、膀胱壁の肥厚過程にSERCA2が影響している可能性が示唆される。
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