研究概要 |
平成22年度は多能性を誘導する4つの転写因子(Klf4,Oct3/4,Sox2,c-Myc)の内在性の発現の有無と細胞の分化度に着目し、各種シグナル阻害剤による、多能性獲得・維持機構の解析を目的に、始原生殖細胞(primordial germ cell : PGC)を対象とした多能性獲得効率の改善・向上を目指し、高い多能性獲得の実験系を確立することに成功した。対象とした細胞は、申請者が保有するNanog遺伝子座に緑色蛍光タンパク、ピューロマイシン耐性遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスの胎仔から、フローサイトメトリーにてNanog陽性を指標とし、ソーティングにて採取したPGCである。 本手法により細胞単位で純化することを可能にし、PGCを対象として、リプログラミングに必須のbFGFを除いた培養条件にて多能性の誘導、レトロウイルスベクターを使用して試みたところ、Klf4,Oct3/4,Sox2,c-mycのうちどの1つの転写因子のみでも、ES細胞様のコロニーが出現した。これらのコロニーは、多能性のマーカーを発現し、長期間安定したES様のコロニー形態を呈し、ヌードマウス皮下移植によって、テラトーマの形成能を有する、多能性幹細胞であることが証明された。ERK阻害剤、GSK-3β阻害剤、FGF-R阻害剤、TGF-β阻害剤を種々の組み合わせで併用して、多能性誘導実験を試みたところ、特定の組み合わせにおいて、数10%の高い効率で多能性を誘導することが可能となった。この高い誘導効率により、細胞集団の中の多能性獲得途上の細胞集団を、前向きに解析することが可能な実験系を提供するものと考えられる。引き続き、多能性誘導・維持のメカニズムの解析を遂行していく予定である。
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