研究概要 |
【目的】今回我々は、膀胱癌に対するTS-1による抗腫瘍効果及びrTS遺伝子導入との併用による抗腫瘍効果の増強に関して研究を行う。現在、TS-1は消化器癌、頭頚癌、非小細胞肺癌、乳癌に広く使用されている。膀胱癌に対しては現時点でTS-1を用いた検討はなされていないが、その治療効果はmetronomic chemotherapy(低用量頻回投与による化学療法)を基盤として有用である可能性が示唆される。更に、TS高値の細胞が、5-FU抵抗性であることが報告されているため、TS-1を用いたmetronomic chemotherapyにTSをdown regulationを惹き起こす治療を併用する事による抗腫瘍効果の増強が期待され、そのTSをdown regulationさせる治療として、我々は前に述べたrTS geneに注目した。本研究ではまず、5-FUを取り巻く生体内の酵素と薬剤感受性との関連、および膀胱癌細胞に対するTS-1単独の治療効果を検討した。【方法】In vitroにてヒト膀胱癌細胞株のTS,DPD値をELISAおよびreal time PCRにて測定し、その値と5-FUに対する感受性との関連について検討を行った。また、TS値をsiRNAにてdown regulationさせた細胞とさせていない細胞における5-FUの感受性に関して、比較検討を行った。更に、皮下腫瘍モデルを作成し、in vivoにおいての抗腫瘍効果についても検討を行った。【成績】in vitroにて、TSまたは、DPD値が高値である細胞の5-FUに対する感受性が低かった。また、siRNAにてヒト膀胱癌細胞株XU-19-19のTS値が有意に低下し、その細胞の5-FUに対する感受性は増強された。また、DPD高値であるKU-19-19およびUMUC-3の皮下腫瘍モデルにて、TS-1投与群が、UFT投与群およびコントロール群より、有意に高い抗腫瘍効果を認めた。【結論】TS-1はヒト膀胱癌細胞に対し、有意に高い抗腫瘍効果を認めた。また、TS,DPD値と5-FUに対する薬剤感受性との関連が示唆され、TSをdown regulationさせる事によって、TS-1の抗腫瘍効果をさらに増強させることができる事が示唆された。
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