研究概要 |
癌の発生、進展の発現調節機構としてnon-coding RNA (microRNA)が近年注目されている。本研究は前立腺癌の進展の分子メカニズムの解明に向けて、前立腺癌臨床検体を用いたmicroRNA(以下miRNA)の発現プロファイルの作成を行うことを第1の目的として行った。次に、前立腺癌症例において発現の低下しているmiRNAを前立腺癌細胞株に遺伝子導入することで、前立腺癌細胞の増殖や細胞死に対する影響を調べた。 前立腺針生検から得られた進行前立腺癌の前立腺癌組織と、癌の含まれない前立腺組織それぞれ5例からRNAを抽出し、発現するmi-RNAのプロファイリングを作成した。さらに、症例数を40例に増やして、注目されるmiRNAの発現をRT-PCR法にて調べた。進行性前立腺癌において著明に発現の低下していたmiRNAを前立腺癌細胞株であるLNCaP、PC3およびDU145に遺伝子導入し、細胞の増殖をXTT assayにて検討し、アポトーシスの有無をflow-cytometlyにて検討した。 Low Density Micro RNA Arrayによる解析の結果、進行性前立腺癌において最も発現の低下のみられたのはmiR-184,miR-187,miR-205,miR-200a^*,miR-31であった。これらのmiRNAを前立腺癌細胞株に導入すると、LNCaP、PC3細胞では増殖抑制を示したが、DU145細胞では変化を認めなかった。これらのmiRNAは、前立腺癌の症例において、前立腺組織での発現が明らかに低下することがRT-PCRにて示された。 以上から、網羅的な遺伝子解析により、進行前立腺癌の増殖や進展を抑えるmiRNAを同定できる可能性が示唆された。今後、本研究から示唆されたmiRNAのなかでも前立腺癌に特徴的なmiRNAを選別し、さらに前立腺癌進展の分子メカニズムを解明するために、それらのmiRNAが制御している標的蛋白コード遺伝子の探索を行う予定である。
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