【方法】ras遺伝子は膀胱癌より同定された初めてのがん遺伝子である。しかし、その膀胱発がんに対する役割は未だ明らかでない。また、膀胱癌の化学発癌モデルとしてBBNは良く知られている。本研究は膀胱発がんにおけるras遺伝子の関与を明らかにするためにヒトプロト型H-rasゲノムを導入したトランスジェニックマウスrasH2とそのlittermateの野生型に0.05%BBNを25週間経口投与し、膀胱発癌を検討した。【結果】25週間投与にてrasH2、野生型共に全てのマウスで膀胱発癌が確認された。摘出時の膀胱重量は野生型0.02gに対して、rasH2 0.58gと有意に重かった(P=0.0386)。深達度は野生型のうち45%が浸潤癌であったのに対し(オス5/8、メス4/12)、rasH2では85.7%(オス8/8、4/6)が浸潤癌であり、有意に頻度が高った(P=0.0162)。摘出膀胱重量中央値はrasH2(122mg)が野生型(73mg)比べて有意に重かった(χ2=5.7805、P<0.05)。また全体平均生存率も野生型23.19週に対してrasH2 24.30週と有意にrasH2の方が短かった(P=0.0328)。また免疫組織化学染色やWestern blotting法による蛋白発現の検討では、BBN投与前に比較した場合、rasH2の方が野生型と比べてERKの高い発現を認めた。【結語】rasH2は野生型と比べてBBN膀胱発癌に感受性が高く、膀胱癌、特に筋層非浸潤性膀胱癌のモデル動物として優れていると考えられた。
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