膜タンパク質の抽出方法として当初A社のキットを用いていたが、タンパク質の収量が予想外に低く、効率的な免疫を行うのに十分ではなかったため、B社のキットに変更した。こちらはタンパク質の収量は劇的に増加したが、抽出条件がより厳しいので、抽出バッファーによる細胞への毒性が懸念されたが、やはりヒト293T細胞に抽出したタンパク質溶液を添加すると細胞が死滅することが判明した。しかし十分な希釈を行ったり、バッファー交換カラムを使用することで、細胞毒性はほぼ解決できた。また、CD4-GFPを発現させた293T細胞より膜タンパク質を回収し、樹状細胞に添加した結果GFPが樹状細胞に認められ、膜タンパク質を取り込んでいることが確認された。樹状細胞の生存や機能に悪影響なく抽出したタンパク質を樹状細胞に添加、貪食できる条件が確立された。予備実験としてヒト293丁細胞より膜タンパク質を抽出し、normal DCとregulatory DCに添加、貪食させ、BALB/Cマウスに免疫し、抗血清を採取し、フローサイトメトリー法によりヒト293T細胞の表面抗原に対する抗体産生を検討した。その結果、normal DCを用いた免疫では293T細胞表面抗原に対する抗体が強力に検出されたが、regulatory DCを用いた免疫では抗体が低下していた。このように精製した膜タンパク質を用いた樹状細胞免疫で、regulatory DCの場合抗体誘導が低下していることが確認された。ヒト前立腺癌細胞であるDU145細胞のCD44陽性CD24陰性細胞は癌幹細胞様の性質をもつことが既に報告されている。FACS法によりCD44陽性CD24陰性細胞の分取が可能になったので、現在CD44陽性CD24陰性細胞に対する特異的な抗血清をもつ免疫マウスを作製中である。
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