研究課題
進行性腎癌の既存の免疫療法を上回る治療効果を期待されている分子標的薬であるマルチキナーゼ阻害薬SorafenibやSunitinibの奏効率はPartial Response(PR)が10%~15%にとどまり、全ての進行性腎癌患者がその恩恵をあずかるわけではない。申請者らは進行性腎癌の分子標的薬の殺細胞効果において小胞体ストレス(ERストレス)が中心的役割を担う点に着目し、ERストレスセンサーであるIRE1α、XBP1の発現上昇、あるいはPERK、elF2αの活性化が、分子標的薬の奏効率を大きく上昇させることを実験的に証明する。癌細胞株に対してDiindolylmethane(DIM)が小胞体ストレスを介して癌細胞の増殖抑制に働き、この作用が小胞体のカルシウム依存性ATPaseに対する阻害2剤であるthapsigarginによって促進されることが報告された(Savinoら Moll Cancer Ther-2006)。申請者らはDIMが癌細胞の発育に関与し(Urol Oncol)、DIMのフェノール基に塩素を付加したコンパウンドが核内リセプターNURR1を活性化し細胞の増殖を抑える働きを有する現象を明らかにした(Mol Cancer Ther)。本実験において申請者らは、腎癌発生の母地である腎尿細管細胞がERストレスに対して高い感受性を有することから本実験を着想し、最も新しく本邦で進行性腎癌の治療に認可されたSunitinibが、恐らくは異常タンパクの蓄積によるERストレス下流シグナルを活性化させることで殺細胞効果を来たすことができる点に初めて注目している。Sunitinibの腎癌に対する腫瘍抑制効果この仮説を証明しえたならば、分子標的薬の効果を促進させることに繋がり、そして進行性腎癌の治療効果の向上に寄与するものである。
すべて 2011
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Cancer Biol Ther
巻: 12 ページ: 12-12
J Urol
巻: 185 ページ: 693-700