非妊時子宮内膜、流産脱落膜および妊娠時末梢血における免疫担当細胞の機能分担と機能発現、NK細胞表面に発現するNatural Cytotoxicity Receptors(NCRs)とNK細胞産生サイトカインの妊娠成立および妊娠維持に関する役割を明らかにすることを目的に患者への説明と同意および倫理委員会の許可のもと以下の検討を行った。 1.uNK細胞におけるNCRs発現 非妊時子宮内膜(反復流産群、着床不全群、コントロール群)および流産脱落膜を対象とした。NK細胞サブセット(CD16、CD56)およびNK細胞上NCRs(NKp46、NKp44、NKp30)発現をフローサイトメトリー(FCM)にて測定した。CD16^+/CD56^<dim>細胞、CD56^<dim>/NKp44^+細胞、CD56^<dim>/NKp30^+細胞は子宮内膜に比して流産脱落膜で有意に高値であった。また着床不全群ではCD56^<dim>細胞とCD56^<bright>細胞との間にNKp44の発現差を認めた。 2.妊娠高血圧症候群(PIH)発症におけるNCR発現とNK細胞産生サイトカイン 妊娠12、20、28、36週に末梢血NK細胞上NCR(NKp46)発現およびサイトカイン(TNF-α、IFN-γ、IL-4、IL-10)産生をFCMにて測定し、PIH群と非発症群との間に差違を認めるか否かを検討した。PIH群におけるNKp46陽性NK細胞(p<0.01)はPIH非発症群に比べて有意に低値であった。CD56^+/NKp46^+細胞は非発症群に比べてPIH発症前である妊娠20週で既にPIH群で有意に低値であり、その後も持続した。またCD56^+/NKp46^+細胞はCD56^<bright>/IFN-γ^-/TNF-α^+細胞(r=-0.495、p<0.02)と負の相関を示した。 【結論】着床不全患者子宮内膜および流産患者脱落膜におけるNCRs発現異常が存在した。PIH群ではNKp46がPIH発症前から低値を示した(PIHの予測因子となり得るかもしれない)。NKp46発現低下によりTNF-α産生細胞が増加し、NK細胞のタイプ1シフトを誘導し、PIHが発症する可能性を示した。
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