研究概要 |
本年度は、神経栄養因子によるゴナドトロピン非依存性の初期卵胞発育の解明を中心に研究を行った。生後5、10日目のマウス卵巣を用いて、神経栄養因子のリガンド・受容体の発現を検討し、その発現様式から初期卵胞発育への作用が期待できる神経栄養因子として、brain-derived neurotrophic factor(BDNF), neurotrophin-4/5(NT-4/5), nerve growth factor(NGF), glial cell line-derived neurotrophic factor(GDNF)が候補として考えられた。生後5日目のマウス卵巣の組織培養下で、それらの候補を培養液に添加し、48時間毎に培養液を交換しながら1週間培養して卵巣に含まれる卵胞を評価定量した。候補因子の受容体またはリガンドの抑制剤を用い、その初期卵胞発育抑制効果について検討した。さらに、候補因子の顆粒膜細胞への作用を調べるため、培養終了後の検体で細胞増殖、アポトーシスへの作用についても検討した。候補因子により発育促進を行った初期卵胞から正常成熟卵が得られるかどうかについて、培養後の卵巣を卵巣除去マウスに移植し、ゴナドトロピン処理後に卵巣を摘出し、卵胞より卵を採取して体外受精を行い、胚移植後に生仔が得られるかを調べた。これらの結果、候補因子はそれぞれ異なった作用を示しながら、初期卵胞発育に関与していることが明らかとなった。詳細は今後論文にまとめ公表する予定である。ヒトに関する研究では、上記候補因子のリガンド・受容体の発現検討を行い、ヒト初期卵胞にも発現していることが確認された。しかし、検体の入手困難さのため、既報の因子とこれらの候補因子を組み合わせた、ヒト卵巣断片培養実験は十分に行えていない。来年度も引き続き、研究を継続する予定である。
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