研究概要 |
【目的】Rasシグナル伝達経路は様々な癌種で活性化されているが、Ras自身を標的とした治療薬は未開発で、下流にあたるPI3K/mTOR経路とMAPK経路を標的とした阻害剤の臨床試験が進行中である。子宮体癌では、PI3K/mTOR経路を活性化するPTEN, PIK3CA遺伝子変異が高頻度(各々約50%と30%)に起こる一方、K-Rasの変異も約20%に認められ、重複例も多い。今回、子宮体癌におけるPI3K/mTOR阻害剤の効果とそのバイオマーカーの探索を行った。 【方法】子宮体癌細胞株13株を、{A群}PTEN, PIK3CAの少なくとも一方の変異陽性、かつK-Ras変異陰性(n=9)、{B群}K-Ras変異陽性(n=2;いずれもPIK3CA変異陽性)、{C群}3遺伝子変異陰性(n=2)に分類した。PI3K/mTOR同時阻害剤BEZ235を添加し、IC50値をMTT assayにて比較した。PI3K/mTOR経路の阻害効果を、p-AKT, p-S6抗体を用いたWestern Blotting法にて、細胞周期に与える影響をFlowcytometry法にて評価した。 【成績】A群の9株はすべてIC50<100nMと高感受性を示したが、B・C群の計4株はすべてIC50>100nMで低感受性であった。A・B群ともAKT, S6のリン酸化は抑制されたが、細胞周期G1停止はA群でB群よりも顕著に認められた。 【結論】子宮体癌において、PI3K/mTOR同時阻害剤は有望な治療法であること、そのバイオマーカーとして、K-Ras, PTEN, PIK3CAの遺伝子変異が重要であることが示された。K-Ras変異群ではMAPK経路など他の経路の抑制も必要と考えられた。
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