エストロジェン受容体(ER)を強制発現する細胞を標識するため、ERα遺伝子とGFP遺伝子を細胞に遺伝子導入し、安定的にERαとGFPを発現する乳腺株化細胞を樹立した。当初、CMV promoter制御下でERα遺伝子とGFP遺伝子をポリシストロン様に接続した遺伝子コンストラクトを用いて、安定発現細胞株の樹立を試みたが、G418薬剤耐性細胞株にはGFP発現は認められたもののERαの発現は認められなかった。対策として、1) トランスフェクション試薬を変更して遺伝子導入の効率を格段に向上させ、2) ERα遺伝子とGFP遺伝子を別個のベクターとすることで遺伝子コンストラクトの長さを短くした。その結果G418とZeocin薬剤選択により樹立した細胞株においては、GFP蛍光を検出し、ウエスタンブロッティング法によりERαの発現を確認した。ERα発現細胞株の樹立には、培養に用いるチャコール処理血清としてbovine serumが有効であった。比較対照として樹立した、ERα遺伝子の代わりにluciferase遺伝子を安定発現する細胞株においても、GFP蛍光を検出し、ウエスタンブロッティング法によりluciferaseの発現を確認した。またERα非発現細胞株として薬剤耐性遺伝子のみを安定発現する細胞株も樹立した。 luciferase遺伝子を安定発現する細胞株を用いて、増殖マーカーbromo-2'-deoxyuridine(BrdU)取り込みによる細胞増殖率の検出法を検討した。すなわち、BrdU取り込み時間を2時間に設定することで、スライドガラス上でのBrdUとGFPの二重免疫染色法により、約20%の細胞増殖率を検出した。今後この増殖率を基準に、樹立細胞の単独培養および共培養条件下でのエストロジェン刺激による増殖率の変化を検討していく予定である。
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