エストロジェン(E2)の細胞増殖制御作用について、エストロジェン受容体(ERα)発現細胞とERα非発現細胞間における傍分泌的増殖制御作用を検討するために、これまでに樹立した3種類の細胞株、1、ERαとGFPを共発現する乳腺株化細胞6クローン(MDA-ER)、および、2、対照群として用いるために樹立した、luciferaseとGFPを共発現する乳腺株化細胞8クローン(MDA-Luc)、3、ERα非発現細胞として樹立した、薬剤耐性遺伝子のみ発現する乳腺株化細胞5クローン(MDA-C)について、単独培養および共培養系における、E2による増殖率の変化を調べた。 単独培養系では、MDA-ERにおいて、Vehicle処置群で見られた約25%の増殖率は、10nM E2処置によって少なくとも48時間後には約10%-20%にまで増殖率が低下した。このうち24時間のE2処置によっても約15%にまで増殖率が低下するクローンMDA-ER#3をERα発現細胞として用いた。MDA-LucおよびMDA-Cの増殖率はVehicle処置群では約30%であったが、24時間の10nM E2処置によって有意な増減は認められなかった。 共培養系では、ERα発現細胞とERα非発現細胞の割合を1:1、4:1、10:1の3種類の条件で検討したが、48時間の10nM E2処置により、いずれの割合においてもERα発現細胞の増殖率が低下した一方で、ERα非発現細胞の増殖率の上昇は認められなかった。 乳癌細胞株MDA-MB-231細胞を用いた本研究では、E2によるERα発現細胞を介した、ERα非発現細胞増殖に対する傍分泌的増殖促進作用は認められなかったため、傍分泌因子の同定およびERα発現細胞におけるE2反応性の増殖抑制作用機序の解明は行わなかった。
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